日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
塩辛
【うるか】
アユでつくる川魚の塩辛
アユは川魚ですが、秋から冬にかけて産卵のために河口へと下っていきます。それが落ちアユです。卵から孵化してしばらくは海で過ごし、プランクトンなどを食べて成長します。春になると幼魚は川をさかのぼってゆき、川底の石についた珪藻(けいそう)を食べるようになります。
そして、おもにアユを原料にした塩辛を「うるか」と呼びます。うるかには様々な種類があり、内臓に細切りにした身をまぜた「切り込みうるか」、内臓だけを使った「苦うるか(渋うるか、土うるかとも)」、内臓と身の全体がペースト状になった「身うるか」などがあり、アユのとれる全国各地でつくられています。
つくり方も様々で、たとえば岐阜県でつくられてきた「渋うるか」は、若あゆの内臓に3割ほどの塩を加え、10日ほどなれさせたもの。このほか、毎日かきまぜながら1カ月ほどかけてなれさせたり、一端なれさせたあと冷暗所に保存して一年以上熟成させるなど、土地土地でそれぞれ工夫された製法が伝わっています。
古くは奈良時代の『播磨国風土記』に「宇留加」として登場しますが、うるかという名前の語源はよくわかっていないようです。「湿香・潤香」などの字があてられることがあるほか、アユそのものの別名がうるかだという説もあります。