Scenario K 無秩序な競争で深刻化した、格差社会
激しい競争の中で生活水準が低下、社会階層が固定化した
世界経済は2026年にようやく20年規模に戻ったが、再度の感染症流行で多くの国が相次ぐ補正予算を余儀なくされ、大きく疲弊した。
政府は国民を補助する資金が少なくなり、各分野の規制緩和によって民間活力による再生に望みを託した。
規制緩和は、企業間の激しい自由競争を生み出し、
技術革新により社会の自動化が大きく進展し、労働市場の競争は激化した。
生活者の収入に大きな格差が生じ、階層間の流動性は低下している。
二度目の感染症流行はこの社会的弱者を直撃し、多くの国は国民を支援する最後の一手として、ベーシックインカムを導入した。
仕事を創造する一部の富裕層はプロジェクト型で働くが、大多数の貧困層はギグエコノミーでの低賃金労働を行っている。
貧困層は将来への期待感は少ないが、ギグワークの稼ぎで日々の楽しみを充実させる方向に消費が向いている。
怪しい店やサイトが乱立するものの、食品加工技術の進展で、栄養価が高い食品が安価で手に入る状況である。
VRを用いた音声技術や映像技術で五感を欺いて、美味しく食べる技術も進展。階層によらず単身者で生活する人が多い。
貧困層でも、自分向けのコミュニティでフィルターバブル※を形成し、帰属意識は概ね充足している。
孤独感やストレスで心身症を抱える人も、VR技術で安価に治療が可能である。
ライフログの売買やポイント稼ぎを行うが、
プラットフォームの選択眼が人生を左右する
個人による情報管理が基本とされており、大多数の貧困層のうち、働きたくない、
もしくは稼ぎを増やしたい人々は「ライフログの売買」を行う。
ブロックチェーン技術は安価なため、ベンチャーを含め数多の民間企業が情報管理プラットフォームに乱立。
ライフログの買い手となる。
医療領域では、富裕層の治療に活用するため、売血のように貧困層の健康情報が取引されている。
健康領域には教育やスポーツなど多様なセクターが参入しており、栄枯盛衰が激しく、生活者もプラットフォームの乗換を頻繁に行う。
働けず、ライフログの価値が低い高齢者は、プラットフォームに蓄積したポイントが第二の収入源だが、
交換市場でのポイントの価値低下や破たんによるポイント消失により、苦境に立たされることがある。
※フィルターバブル:ユーザー個々の嗜好で変化するフィルター機能によって、
一方的な見地に立った情報しか手に入らなくなる事象。