塩辛
【すくがらす】
琉球王家の王子が食べ方を考案
あたたかい海のサンゴ礁で藻場に生息するアイゴ(アミアイゴ)の稚魚は、沖縄の方言で「スク」または「シュク」と呼ばれます。このスクをつかった「カラス」(沖縄の方言で塩辛のこと)が「すくがらす」です。海に囲まれ、魚介類や天然塩が豊富な沖縄では、いろいろな魚の塩辛が古くからつくられてきました。そのなかでも、すくがらすは定番中の定番。塩辛いすくがらすを肴に、香り高い泡盛を楽しむ。いかにも沖縄らしいとりあわせです。
旧暦6月(今の暦で7月)はじめにあたる夏の大潮のころから、スクの大群が岸に近づいてきます。沖縄名物、スク漁のシーズンです。このときには漁師さんはもちろん、沿岸に住む人々がこぞって海に出かけるといいます。浅瀬の藻場に網をしかけ、海に入った人がまわりから群れを追い込みます。ここで大量に水揚げされた体長4cmほどのスクを、天然塩でじっくりと漬け込むのが本来のスクガラスですが、近年ではアミアイゴに限らず、ほかのアイゴの仲間でつくることもあるそうです。
スクに3割ほどの塩を混ぜて重しをかけると、数日で水分があがってきます。液体だけを鍋にいれて火にかけ、塩をさらに加えて沸騰させたあと、もとのスクといっしょにかめやびんに入れます。3カ月ほど発酵させるとすくがらすとして食べられるようになりますが、完熟するまでには、1年近くかかるのだといいます。
すくがらすを島豆腐(沖縄特有のかためでしっかりした豆腐)にのせたものが「すくがらす豆腐」。この食べ方は、琉球王朝の子孫で、食通としても知られた松山王子尚順が考案したのだとか。きれいに切った島豆腐にきちんと並べて置くのが一般的なスタイルのようです。このほか、すり鉢ですってペースト状にし、アンチョビーのように使うなどの食べ方もあります。