発酵食品名鑑

日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
  • 水産発酵食品

魚醤油(魚醤)

【しょっつる】

秋田の郷土料理に欠かせない魚醤油

「しょっつる」とは秋田地方につたわる魚醤油で、その名は「塩汁」がなまったものといわれています。旬のイワシやハタハタを生のまま、かめなどに入れて塩漬けにし(麹を加えることもあります)、床下などで1~3年ほどじっくり熟成させます。自然にしみ出してきた水分をこし、大豆の醤油と同じように利用します。かつては各家庭の自家製で、古ければ古いほどよいとされ、かめの中身はいつまでもとりかえず、毎年、新しい材料を足して仕込むものだったとか。このため、家庭によってそれぞれの味が受け継がれていたそうです。

魚醤油そのものの歴史は古いため、しょっつるも昔からつくられていたものと考えられますが、昭和の時代になってから、郷土色豊かな独特の風味が全国的にあらためて見直され、以来特産の調味料として広く知られるようになりました。

秋田の名物料理のひとつが、その名も「しょっつる鍋」。もともとは大きなホタテの貝殻を鍋がわりに、水でうすめたしょっつるで魚や野菜を煮て食べる料理でした。また、しょっつるは同じく秋田名物の「きりたんぽ鍋」の味つけにも使われます。そのほか、様々な料理に用いられている調味料です。

ハタハタは、スズキ目の魚で体には鱗がありません。宮城県以北の太平洋、日本海、オホーツク海などの深い海にすんでいますが、11月末から12月半ばに水温が下がると、産卵のため水深2~3mの浅海にやってきます。秋田ではハタハタのほか、カタクチイワシやアジ、ニシンなどいろいろな種類の魚がしょっつるの原料として使われています。