発酵食品名鑑

日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
  • 水産発酵食品

なれずし

【サンマのなれずし】

なれずしの宝庫・和歌山県の名物

「サンマのなれずし」は和歌山県を中心に太平洋側でつくられるなれずしです。このなれずしは独特の香りがあるため「くさりずし」とも呼ばれています。

昔ながらのつくり方のなれずしは、酢を使いません。新鮮なサンマを開いて、塩漬けにします。数カ月から長いものは1年近くも漬け込みます。塩抜きをしてからご飯を抱かせ、重石をかけて桶に漬け込みます。季節にもよりますが、1カ月ほど熟成させれば、酢を使わずにつくっていても自然発酵だけで酸味が生まれ、独特の香りをもったなれずしが完成します。なかには、30年以上も熟成させた、「本馴れ鮓(ほんなれずし)」もあります。

しかし、最近では数日間漬けただけのなれずしもつくられています。塩漬けはせずに、塩水で洗ったり軽く塩をまぶしたあとに水洗いし、よく水を切ってから酢で一夜漬けにします。その後、酢を切ってから酢飯を抱かせて一日寝かせたものを食べます。見た目も味わいも現在のすしに近いものになっています。