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【くさや】
「くさいや」が語源!? 漁師の工夫が生んだ漬け汁のうま味と香り
独特のにおいで知られる「くさや」は、400年ほど前、伊豆七島の新島で生まれたといわれます。このあたりでは、近海でとれるマアジやムロアジを干物にしていましたが、塩干しにするため、半切(はんぎり)と呼ばれる浅い桶に海水をくんでおいて、魚を浸しては天日に干していました。半切の中の海水は魚を漬けているうちに発酵して特有の風味をもつようになり、そこに浸して干した魚もまた、普通の塩干しとはちがったうま味と香りをもつようになったのです。その強烈な臭気から「くさいや」が転じて「くさや」となったといいます。
こうして生まれたくさやの漬け汁は、長い間受け継がれています。そこではたくさんの有用な微生物が絶妙なバランスを保っているため、漬け汁を長い間使わないでいると微生物が死んでしまうのだそうです。
くさやのつくり方もまた、今も昔も変わりありません。魚の腹をさいて内臓を取りのぞき、水洗いして血液や汚れを落とします。それを伝統の漬け汁に2時間くらい漬けてから天日に干し、また漬け込んでは干す手順を繰り返すのです。仕上がったくさやは、きれいなべっこう色になります。漬ける回数が少なく、色の浅いものは新くさやや半くさや、しっかり仕上がって黒みがかったものは本くさやと呼ばれます。
くさやの素材はムロアジやマアジのほか、トビウオ、サンマなど近海でとれる新鮮な魚です。脂がのっていないほうがくさやには適していて、ムロアジなら早春と夏、トビウオなら春など、素材とする魚によってちがった旬の味を楽しむことができます。
物資の不足しがちな島の暮らしでは、くさやの漬け汁をお腹の薬にしたり、怪我したところに塗ったりしていました。近年の研究では、漬け汁に天然の抗生物質が含まれていることがわかっています。