日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
白菜
【広島菜漬け】
浅漬け、古漬けと味わいの違いも魅力的な菜漬け
広島菜はアブラナ科で白菜の一種ですが、通常私たちが見かける白菜と違って根元から葉先まで鮮やかな緑色なのが特徴です。やや硬く平たい茎から別名「平茎(ひらぐき)」とも、特産地から「安芸菜(あきな)」とも呼ばれます。この広島菜がもつ本来の風味を生かした伝統の味が、広島名産の「広島菜漬け」です。
広島菜は、今から400年近く昔の慶長年間に安芸の城主だった福島正則が、または300年ほど前の安芸観音の住職が、京都から種を持ち帰ったといわれています。明治時代に今の生産地である広島の農家が持ち帰ったという説もあります。いずれにしてもルーツは京都にあり、栽培されるなかで品種改良がすすみ、現在の広島菜になったというのが定説のようです。
夏の暑さに弱い広島菜は、9月下旬にまいて晩秋から初冬に収穫します。また、春先にまいて初夏に収穫することもあります。収穫された広島菜は、水洗いしたあと、2~3日間塩漬けしてから、米麹と昆布、赤唐辛子で本漬けします。
本来の葉や茎にほどよいうま味があり、新鮮でくせのない香りが特徴の広島菜漬け。浅漬けのうちは本来の鮮やかな緑色が美しく残り、古漬けになると飴色がかった深い緑になり味にコクが増します。
食べるときは一口サイズに切って供しますが、大きな葉をそのまま広げておにぎりを包んだり、刻んでお茶漬けなどにしたり、また古漬けなら刻んで油炒めにしたりと、いろいろな食べ方を楽しめます。