のどに刺激を与える消炎成分をオリーブオイルから発見 Gary K. Beauchamp

オレオカンタールの発見と薬効

エクストラバージン・オリーブオイルには天然の消炎成分が含まれており、そのせいで、のどが焼け付くようなピリピリした独特の感覚を与えるのだという仮説を証明するため、モネル研は、別のスポンサー企業のフィルメニッヒ社(スイスの香料メーカー)と共に、新たに大規模な共同研究を開始しました。そして2005年、学術雑誌『ネイチャー』にこの仮説を実証したレポートを発表し、ピリピリ感の原因が「オレオカンタール」という成分だと報告しました。
「オレオカンタール」は私たちのつくった造語で、Oleoはオリーブ、canthは刺激、alはアルデヒドを示しています。オレオカンタールには、イブプロフェンとの化学的な関連性はありませんが、私たちはその知覚特性から薬効を推測し、見事に予測することができたのです。
このレポートは科学界だけでなく一般社会にも大きな関心を引き起こし、モネル研以外にも多くの研究者がオレオカンタールの薬学的特性を研究するようになりました。その結果、アルツハイマー病やがんを含むさまざまな炎症性疾患のインビトロ・モデル(実験室など人工的な環境での実験モデル)で、この成分の薬効を実証する論文が次々に発表されるようになっています。近年の論文例は、記事の末尾をご参照ください。(*1)

オレオカンタールの発見と薬効

モネル研は現在も、イブプロフェンと新たに発見されたオレオカンタールが、どのようにのどに刺激をもたらすのかという、メカニズムを解明するための研究を続けており、近ごろ、これら2つの成分の受容体がチャネルタンパク質のTRPA1であることを突き止めました。
TRPA1はカプサイシンのような化学的刺激(受容体はTRPV1)だけでなく、温度にも反応するイオンチャネルタンパク質の一種です。TRPA1はヒトの口腔内でのどだけに発現する受容体なので、イブプロフェンとオレオカンタールの刺激も、のどだけが感じるのです。唐辛子を口に入れた時に、口の中とのどの両方がピリピリするのは、TRPA1とは違ってカプサイシンの受容体TRPV1が、口の中とのどの両方で発現しているからです。

さらなる研究成果への期待

モネル研では、オレオカンタール変異体の構造活性や、オレオカンタールの健康増進効果、明らかな知覚特性と薬学的特性を持つエクストラバージン・オリーブオイルのその他の成分についての研究を続けています。TRPA1の活性化と消炎効果との間にメカニズム的なレベルでの関連性があるかどうかも大きな研究テーマです。炎症が人々の健康や疾病に及ぼす影響が次第に明らかになってきましたが、今後、天然の消炎成分であるオレオカンタールについて新事実が見つかれば、私たちが健康で暮らしていくためのさらに重要なヒントが得られるかもしれません。

文:Gary K. Beauchamp / 訳:キリン食生活文化研究所

※1オレオカンタールの薬効成分に関する論文の例(2011-2013年)

  1. 1. ACS Chem Neurosci. 2013 Feb 25. [Epub ahead of print] Olive-Oil-Derived Oleocanthal Enhances β-Amyloid Clearance as a Potential Neuroprotective Mechanism against Alzheimer's Disease: In Vitro and in Vivo Studies. Abuznait AH, Qosa H, Busnena BA, El Sayed KA, Kaddoumi A.
  2. 2. Curr Med Chem. 2013 Mar 15. [Epub ahead of print] Oleocanthal inhibits proliferation and MIP-1α expression in human multiple myeloma cells. Scotece M, Gómez R, Conde J, Lopez V, Gómez-Reino JJ, Lago F, Smith AB, Gualillo O.
  3. 3. Bioorg Med Chem. 2013 Apr 1;21(7):2117-27. doi: 10.1016/j.bmc.2012.12.050. Epub 2013 Jan 9. Olive secoiridoids and semisynthetic bioisostere analogues for the control of metastatic breast cancer. Busnena BA, Foudah AI, Melancon T, El Sayed KA.
  4. 4. J Nutr Biochem. 2013 Mar 7. pii: S0955-2863(12)00309-9. doi: 10.1016/j.jnutbio.2012.12.011. [Epub ahead of print] Effect of olive oil phenols on the production of inflammatory mediators in freshly isolated human monocytes. Rosignoli P, Fuccelli R, Fabiani R, Servili M, Morozzi G.
  5. 5. Life Sci. 2012 Dec 10;91(23-24):1229-35. doi: 10.1016/j.lfs.2012.09.012. Epub 2012 Oct 5. Further evidence for the anti-inflammatory activity of oleocanthal: inhibition of MIP-1α and IL-6 in J774 macrophages and in ATDC5 chondrocytes. Scotece M, Gómez R, Conde J, Lopez V, Gómez-Reino JJ, Lago F, Smith AB 3rd, Gualillo
  6. 6 J Nat Prod. 2012 Sep 28;75(9):1584-8. Epub 2012 Sep 18. Modulation of tau protein fibrillization by oleocanthal. Monti MC, Margarucci L, Riccio R, Casapullo A.
  7. 7 Food Funct. 2011 Jul;2(7):423-8. doi: 10.1039/c1fo10064e. Epub 2011 Jul 7. New insights on the interaction mechanism between tau protein and oleocanthal, an extra-virgin olive-oil bioactive component. Monti MC, Margarucci L, Tosco A, Riccio R, Casapullo A.
  8. 8. Carcinogenesis. 2011 Apr;32(4):545-53. doi: 10.1093/carcin/bgr001. Epub 2011 Jan 7. p-HPEA-EDA (Oleocanthal), a phenolic compound of virgin olive oil, activates AMP-activated protein kinase to inhibit carcinogenesis. Khanal P, Oh WK, Yun HJ, Namgoong GM, Ahn SG, Kwon SM, Choi HK, Choi HS.
  9. 9. Planta Med. 2011 Jul;77(10):1013-9. doi: 10.1055/s-0030-1270724. Epub 2011 Feb 15. (-)-Oleocanthal as a c-Met inhibitor for the control of metastatic breast and prostate cancers. Elnagar AY, Sylvester PW, El Sayed KA.
<出典>
Nature 437, 45-46 (1 September 2005) Phytochemistry: Ibuprofen-like activity in extra-virgin olive oil. Beauchamp GK, Keast RS, Morel K, Lin J, Pika J, Han Q, Lee CH, Smith AB & Breslin PAS

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