発酵食品名鑑

日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
  • 味噌

【関東麦味噌】

香ばしさがクセになる、素朴な味わい。

麦味噌は一般的に、九州や山口県、愛媛県などの田舎味噌として知られていますが、米味噌主体の関東地方でも、埼玉県や群馬県、栃木県などでつくられてきました。同じ麦味噌ですが、少し辛口の味わいが特徴です。

麦味噌は麦麹でつくりますが、元々は農家などの自家用味噌としてつくられていました。

味噌の甘さを決めるポイントは麹の使用量です。甘口が主流の九州に対して、関東の麦味噌は麹が控えめで辛口の仕上がりになっています。また、長期間寝かせるためうまみの深さが増しているのが特徴です。

麦味噌の多くは麦の粒がそのまま残っています。そのため、麦味噌で味噌汁を作るときには味噌こしが必要ですが、このひと手間が麦味噌の味噌汁を、じつに個性的で風味豊かにしているのです。お湯で溶き入れると、麦の粒の中の麹菌が空気に触れ、甘い香りが立ちます。麦味噌ならではの豊かな香りは最大の特徴といえるでしょう。

ちょっと面倒だなと思われる方は、野菜スティックのようなシンプルな料理で是非一度試してみてください。素材の味を引き立てる香ばしい麦味噌の味わいは、クセになることでしょう。

その他、味噌焼き、味噌煮など、いつものお料理で麦味噌を使えば、米味噌とは違った風味を、実感できるはずです。