発酵食品名鑑

日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
  • 味噌

【八丁味噌】

じつは洋食にも相性よし!濃厚な風味が特徴。

独特の食文化を持つ中京地方。この地域を代表する味噌がいわずと知れた八丁味噌です。八丁味噌は赤褐色の辛口味噌で、豆味噌の一種です。極めて長い熟成期間を経てつくられる味噌は、独特の香りと複雑な味わいが楽しめます。

八丁味噌は米麹を使わず、大豆と塩だけでつくられています。発祥の地は、現在の愛知県岡崎市。江戸時代初期のことでした。八丁村と呼ばれていた地域でつくられていたことが名前の由来になっています。

やがて、参勤交代によって江戸の町にも知られるようになり、明治時代には宮内省御用達にもなりました。

深く濃い赤褐色の色合いは、甘味が少なく、渋みとうまみが凝縮されており、中京地方の名物料理には欠かせない存在です。

名古屋名物の一つ、味噌カツのタレも八丁味噌がベースです。八丁味噌と鰹だし、砂糖をベースにした濃厚なタレをつけて食べるのが特徴です。お店によっては衣の中に味噌が入っていたりと、独特の風味と濃厚な味わいが楽しめます。

他にも、味噌煮込みうどんや、この地域の味噌田楽は八丁味噌が主役の料理として有名です。さらに、デミグラスソースに溶かしいれたり、ピザに使ったりと、隠し味として様々な料理に八丁味噌が使われています。

また八丁味噌は保存性にも優れていることから、南極観測隊の携行食品になったことがあります。気温の変化にも耐えられ、長期保存の利く食料として重宝されているのです。

独特の風味が気になるという方は、いつもの味噌との合わせ味噌を試してみてはいかがでしょうか。八丁味噌に少し砂糖を加えると中華甘味噌のテンメンジャンに近い味になる、といった広がりを楽しめるのも、八丁味噌ならではの“ミソ”なのです。