日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
【関西白味噌】
伝統に育まれた、ふわっと甘く、優しい味。
悠久の都、京都。この地を中心につくられる甘口の関西白味噌は、ごく淡いクリーム色が特徴の味噌です。まだ甘味が貴重だったころの調味料として発達したといわれています。
冬の京都の底冷えは有名ですが、現代のような暖房のない時代に、少しでも甘味をとって寒さをやわらげようとしたのでしょう。
京都・今宮神社の名物あぶり餅は、餅を炭で焼き、白味噌をベースにしたタレにさっとひたして出されています。ふわっと立った優しい香り。まさに伝統に育まれた京都ならではの深い味わいです。
白味噌に漬けておいた季節の魚やお肉を、炙って食べる西京漬けも、京都の伝統食材として有名です。山に囲まれた内陸地、京都の保存食として古くから親しまれてきました。
では、関西白味噌独特の優しい甘さはどこからくるのでしょうか。
味噌の甘さの決め手は米麹です。一般的な味噌の場合、大豆1に対して米麹1程度の割合ですが、関西白味噌の場合は大豆の約倍量の麹を使うのが特徴です。
また、美しいクリーム色を出すために大豆は皮をむき、蒸さずに煮ることで淡い独特の色合いを保っています。
関西白味噌はつくり置きをしない短期熟成型の味噌なので、塩分濃度が低いのも特徴です。白味噌料理の味わいが濃すぎず、しつこくならない理由はこの塩分によるところが大きいようです。
とくに京都では練り味噌、白和えなどの郷土料理、田楽などの定番料理、お正月にいただくお雑煮もほとんどの家庭が白味噌仕立てだといわれるほど、各家庭に欠かせない調味料です。塩分が少なく、まろやかな甘さで味にアクセントを加えてくれる関西白味噌。ご家庭でも手軽に出来る料理がたくさんありますので、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。