日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
【九州麦味噌】
冷汁、だご汁、おでんに、大活躍の九州麦味噌。
九州を代表する味噌、九州麦味噌は甘口で芳醇な香りが特徴。気候が温暖なことから、熟成期間は短く、色は比較的淡いのが特徴です。
九州麦味噌は様々な県でつくられていますが、熊本市内にはなんと味噌天神(正式名称:本村神社)という、味噌の神様がまつられている神社があります。
味噌天神の歴史は奈良時代にさかのぼります。元々は疫病がはやった時に薬の神様、御祖天神をまつったのが始まりです。
その後、味噌が腐ってしまった時に、「境内の笹を仕込み桶に立てれば、よい味噌になる」とのお告げに従ったところ、味噌が元通りになったことから、味噌の神様としてまつられるようになったといわれています。
現在も毎年「味噌天神秋季例大祭」が催され、参拝者に麦味噌が配られています。
九州では、お味噌汁もちょっと独特です。南国・宮崎では冷汁という、その名のとおりの冷ました味噌汁が夏場の定番です。夏バテの頃に重宝されています。
また、九州地方では「だご汁」という味噌汁が郷土料理として広く親しまれています。これは、小麦粉を平たい団子状やきしめんのような平麺にしたものを入れたもので、北に行くほど平麺状のものが多くなるといわれています。
鹿児島県の味噌おでんは、だしに甘口の麦味噌とザラメ、焼酎などで味付けして煮込んだもので、鹿児島名物として知られています。
麦味噌の味も各県ごとにバリエーション豊かですが、九州のおいしい郷土料理に味噌が一役かっているのは間違いありません。