発酵食品名鑑

日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
  • 味噌

【蘇鉄味噌】

解毒発酵でつくられる、奄美・沖縄特産の味噌。

全国各地の味噌の中でも、蘇鉄味噌はとりわけ特徴的な味噌のひとつです。蘇鉄(ソテツ)とは、九州南部や沖縄に生息するヤシの木のような植物です。この蘇鉄の実を使ってつくるのが蘇鉄味噌。奄美大島や粟国島が主な生産地です。

蘇鉄味噌づくりで最も特徴的なのは、微生物の働きで蘇鉄の持つ毒素を取り除く「解毒発酵」が行われていることです。発酵で蘇鉄の実の毒を取り除いてから、麹菌を付けていくという独特の製法でつくられています。

独特の風味と甘味が特徴の蘇鉄味噌は、奄美や沖縄では古くから茶請けやつまみとして食べられています。

また、蘇鉄味噌を使った料理も豊富で、魚の身をほぐして混ぜ込んだユーミソや、豚の耳や内臓と混ぜたワミソなどがあります。

蘇鉄味噌をラードでさっと炒めたアンダミスー(脂味噌)は沖縄の定番料理となっています。アンダはラード、ミスーが味噌の意味です。沖縄では、ご飯に乗せたり、おにぎりの具にしたりして親しまれています。味わいは少し甘辛く味付けされているのが一般的です。

さらに、この脂味噌を薄い小麦粉の皮で餃子のように包むと、ポーポーという料理になります。

奄美や沖縄を訪れた際はもちろんですが、物産展や郷土料理のお店で蘇鉄味噌を使った料理を見かけたら、是非一度味わってみてください。