母親の飲酒理由が、
ビールのにおいに対する子どもの反応に影響 Julie A. Mennella

今回は、子どもたちがビールのにおいを好きになるか嫌いになるかは、母親の飲酒理由に影響されるという内容です。モネル化学感覚研究所の発達心理生物学者ジュリー・メネラ教授による報告です。少しショッキングな内容ですが、気持ちよくビールの飲む楽しさや笑顔のコミュニケーションをお客さまと一緒に考えたいと思います。

はじめに

アルコール飲料に対する子どもたちの反応は、彼らの内面を伺い知る「窓」ともいえます。においに関する情報は、感情と記憶の非言語的側面を処理する脳の領域に直接到達します。私たちは、においに対する子どもたちの反応を調べることで、彼らの内なる感情世界を照らし出せると考えました。この研究結果は、雑誌“Alcohol”(*)にも発表しています。

*Mennella, JA and Forestell, CA. Children’s responses to the odors of alcoholic beverages: A window to emotions. Alcohol, 2008, 42, 249-260.

ビールのにおいと、他のにおいを比較

実験では、5歳~8歳の子ども145人に、「ビールと風船ガム」「ビールとチョコレート」「ビールとコーラ」「ビールとコーヒー」「ビールと緑茶」「ビールとピリジン(卵の腐ったようなにおいのする物質)」「ビールとタバコの煙」の7種類の組み合わせで、においを嗅がせました。そして、それぞれの組み合わせについて、どちらのにおいが好きかを選ばせました。
一方で、その子どもたちの母親にアンケートを行い、飲酒の習慣を調べました。そして、なぜ飲酒をするのかという質問の選択肢に、「緊張や不安を感じるときにリラックスするため」「機嫌が悪いときに気持ちを切り替えるため」「悩みを忘れるため」「すべてを忘れるため」という逃避的理由を盛り込み、2つ以上に「はい」と答えた35人を「逃避的飲酒者」に分類しました。

逃避的飲酒者の子どもはビールのにおいを嫌う

この結果、「逃避的飲酒者」に分類された母親の子どもは、そうでない子どもに比べて、卵の腐ったようなピリジンのにおいやタバコの煙などの不快臭よりも、ビールのにおいを嫌悪する傾向が強いことが分かりました。つまり彼らは、実験でどちらかを選ばなければならなくなったとき、卵の腐ったようなにおいやタバコ臭の方がビールよりもましだと感じていました。