日本各地の発酵食品をご紹介します。世界の食文化研究の第一人者、石毛直道の「発酵コラム」も必読です。
魚やイカの身や内臓など、鮮度が落ちやすい水産品を塩漬けにし、熟成させたものが塩辛です。発酵がすすむと、食感がやわらかくなり、本来とはちがった味や香りが加わります。
イカ、カツオ、ウニやサザエ、川魚のアユなど、その素材は土地によって様々で、各地で特徴ある塩辛が古くからつくられてきました。
熟成させた魚介類からとれる液体を調味料として利用するのが魚醤油(うおじょうゆ)です。醤油のルーツともいわれていますが、大豆を麹によって発酵させる醤油とちがい、魚醤油は
たっぷりの塩で漬け込んで発酵させます。
「すし」というと、現代の私たちは酢飯の上に生の魚介類をのせたものをまず思い浮かべますが、もともとは魚などを塩漬けにして発酵させ、自然に酸味を生じたものをさしました。古くは平安時代中期の『延喜式』に、伊勢(三重県)の鯛鮓(タイずし)、近江(滋賀県)や筑紫(福岡県)の鮒鮓(フナずし)をはじめ若狭(福井県)のアワビの甘鮓(あまずし)、讃岐(香川県)の鯖鮓(サバずし)などがあり、各地で古くからつくられていたことがわかります。